ここから本文です

概要

はじめに

私たち生命体の恒常性維持に様々なレドックス反応「レダクション(還元)とオキシデイション(酸化)」が重要な役割を果たしていることが分子生物学の進歩によりわかってきました。好気性生物は酸素を使ってレドックス反応を制御しつつエネルギーを産生していますが、この制御が効かないと活性酸素を過剰に生じ、酸化ストレスに晒されることになります。

図1 生体レドックス制御の破綻により引き起こされる疾患
図1 生体レドックス制御の破綻により引き起こされる疾患

図1に示すように、近年、種々の環境要因(物理因子、化学因子、生物因子)の変動により、あるいは非健康的な生活習慣により過剰の活性酸素・フリーラジカルが体内で産生されレドックスバランスが崩壊し、がん、生活習慣病、心疾患等を引き起こす可能性が強く指摘されるようになってきました。例えば、我が国において死因の6割は生活習慣病関連死といわれており、レドックスに着目した先端融合医療の創出が国民の急務と考えられます。そこで、九州大学では「生体レドックスを詳細に評価し、自在に操ることを可能とする統合技術」としてレドックスナビゲーションの概念(図2)を提唱し、レドックス関連疾患の早期診断・治療法の確立、治療薬の開発を指向した先端融合医療領域を創生すべく、科学技術振興調整費「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」事業に対して「先端融合医療レドックスナビ研究拠点(総括責任者:有川節夫 九州大学総長)を提案し、2007年に採択されました。2009年に行われた絞り込み審査では、13拠点のうち5拠点が継続課題として採択され、本拠点もその一つとして選ばれ現在事業を継続しております。

図2 生体レドックスナビゲーション「視て、自在に操り、治療する
図2 生体レドックスナビゲーション「視て、自在に操り、治療する」

先端融合医療レドックスナビ研究に向けた九州大学の特色

生体レドックスに関し、九州大学では世界的に最も先駆的な研究を遂行しています。例えば、生体レドックスの分子イメージングに関して、世界トップクラスの 設備を有しており、米国NIHに匹敵する先端拠点となっています。また、糖尿病や癌、神経疾患などのレドックス病態に関する基礎研究ならびに治療の研究、 レドックス画像化プローブ等の新規材料や最先端センシングなどに関する研究、抗酸化食品などの機能性食品の開発ならびにこれらの生体内代謝への影響を解析 するメタボロミクス研究等、先進的な研究がなされています。一方、これらの研究はいずれも民間企業と盛んな産学連携がなされており、それぞれの企業は、非常に特色のある研究開発能力を有する優れた企業群であります。

九州大学における拠点化構想の内容

本拠点では、学の英知と医療・製薬・分析機器の各工業界の創造力を結集し、レドックスに関する疾患の分析、早期診断、治療、創薬を一貫して推進する先端融 合医療領域を創成し、絶えずイノベーションを創出する拠点として、安心安全な健康社会を実現することを目的としています。具体的には、生体レドックスナビ ゲーションを共通基盤とし、(1)生体レドックス計測・イメージングシステムおよび生体レドックス感受性プローブを開発し、(2)生体レドックス変動によ る代謝変化を解析するメタボロミクスを立ち上げ、(3)これらを用いて疾患におけるレドックスの関与を解明すると共に、(4)レドックス関連疾患の早期診 断・治療、治療薬開発を一貫して推進します。さらに、(5)研究成果を地域住民や地方病院へ還元するためのネットワークを構築します。また、先端融合医療 領域で産学双方向の人材育成システムを達成し、高齢化社会を支える人に優しい医療を推進します。