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ネット医療グループ研究内容

背景

医療ネットワーク分野において、EUでは2000年代初頭より電子カルテ (EHR; Electric Health Record)や個人健康記録(PHR; Personal Health Record)の開発が進められ、国民番号を利用し医療情報を一元管理する方向に向かっている。米国では2009年オバマ政権によりEHR開発が強力に進められ、2011年よりミーニングフルユースプロジェクトが開始予定であり、標準化、グローバル相互運用性等の面でEUとの連携合意に達した。また、日本国内では、2001年1月に開始された「e-Japan戦略」で、保健医療分野の情報化に向けてのグランドデザイン、医療機関における診療情報共有化のためのセキュリティシステムの開発・実証事業や電子カルテを中心とした地域医療情報化事業・病院内情報システム整備事業などのIT基盤整備が本格化し、2003年7月開始の「e-Japan戦略Ⅱ」で厚生労働省電子的診療情報交換推進事業(SS-MIX)などが進められた。上記の医療ネットワーク推進などにより、K-MIX(かがわ遠隔医療ネットワーク)や東海ネットをはじめ、全国各地で遠隔医療ネットワークが形成されている。2009年12月には「新成長戦略」が策定され、地域の絆の再生というキャッチフレーズのもとに、(1)遠隔医療システムの研究開発・実用化促進、(2)医療・介護・健康関連サービス提供者のネットワーク連携、(3)情報通信技術の活用による在宅での生活支援ツールの整備などが掲げられており、国家レベルで健康に関するネットワークの研究開発が求められている。

一方、過剰な活性酸素産生などにより起こる体内の酸化・還元状態(レドックス)のバランスの崩れが生活習慣病やがんなど様々な病気の発症・進展に関わっていることが示唆されており、本レドックスナビ研究拠点において、これらのレドックス異変を「視て、操り、治療する」研究を推進している。そこで、ネット医療グループでは、第一段階として、病気を予防し健康を支援する「在宅健康支援ネットワークシステム」を構築することで地域住民の健康意識の向上およびレドックス概念の認知度上昇を図り、その発展型として、本レドックスナビ研究拠点で得られた研究成果や科学的エビデンスに基づいて得られた健康に関する新しい成果を活用し健康を支援する「レドックスナビヘルスネットワーク」を構築する計画である。

九州電力グループは光ブロードバンドインターネット通信網BBIQをはじめ様々なインフラ技術のノウハウを有し、九州における地域住民の生活に欠かすことの出来ない企業であり、九州大学との協働研究の実績もある。IT情報通信基盤をフル活用し、本レドックスナビ研究拠点で得られた研究成果や科学的エビデンスに基づいて得られた健康に関する新しい知見を地域住民に還元するシステムを構築することで、地域住民の安心安全な社会の形成に大きく貢献できると非常に期待できる。

在宅健康支援ネットワークシステムについて

生活習慣やバイタルデータの変化を観察するためには、定期的な測定・記録が必須である。ネット医療グループでは生活習慣病の予防を目指し、血圧、体重、歩数を自動収集可能、且つ測定値をグラフで閲覧可能な「在宅健康支援ネットワークシステム」の構築を進めている。また、省エネ・節電への高まる関心に伴い、消費電力を自動的に収集する仕組みを併せ持つ(下図)。

在宅健康支援ネットワークシステムの構成

在宅健康支援ネットワークシステムの構成

生活習慣とバイタルデータの関連性を見出すことを目的に、20代から50代の男女110名を対象に、2013年2月より本システムの実証試験を開始した。参加者には毎日起床後に血圧と体重の測定を、就寝前に血圧の測定をお願いした。また、起床後は歩数計を常に携帯するようお願いした。現在も実証試験を継続中である。

実証試験開始直後である2013年2月とその4ヶ月後の5月に血圧、体重、BMI、歩数を調査した。
① 2月から5月にかけ血圧と体重に統計学的な有意差が認められた。
  収縮期血圧:118→112mmHg(P=0.002)
  拡張期血圧:76→72 mmHg(P=0.010)
  平均血圧:95→88 mmHg(P=0.000)
  体重:63.4→62.9 kg(P=0.010)
② BMIと歩数はともに有意差は認められなかったが、歩数は増加傾向にあった。
  BMI:22.1(SD3.0)→22.0(SD 2.9)
  歩数:7711(SD 3177)→8229(SD 2996)歩

本実証試験の結果は第33回医療情報学連合大会で発表しました。