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生体レドックス内視鏡グループ研究内容

外科手術は患者への負担を軽減すべく、開腹手術から内視鏡手術へとそのアプローチ法を変えつつある。現在、かなりの手術が内視鏡手術で行えるようになってきており、我が国では既に70万例に施行されている。大きな切開を伴うこれまでの開腹手術と比較してはるかに傷が小さいため、術後の回復も早く、傷跡も小さく目立たなくなるなど患者にはメリットが多い。また開腹手術に比べて腹腔内の癒着が起こりにくいと言われており、合併症の危険度も低い。さらには内視鏡の拡大視効果によってより繊細な手術が可能であり、開腹手術に較べ安全な面も持ち合わせている。これら数々の優れた利点により、内視鏡外科手術は代表的な低侵襲治療法として、外科手術における割合は今後ますます高まってゆくものと期待される。

しかし、内視鏡手術は術野が制限される上に、使用器具が開腹手術とは大きく違っており、手技習得には開腹手術より多くの時間が必要とされる。手術支援ロボットに代表されるコンピュータ技術を駆使した手術支援システムは、これらの課題に対するもっとも有力な方策である。このシステムはコンピュータ制御された治療機器を用いることにより、外科医手術支援システムはそのような様々な制限を軽減し、外科医がより正確で安全に手術を行えるように開発された。生体レドックス内視鏡グループでは、この手術支援ロボットの「目」として、様々な疾患に関係する新しい生体情報であるレドックス応答をとりいれた世界初の生体レドックスナビ手術支援システムの開発を目標としている。

この生体レドックスナビ手術支援システムの中核となるのが、レドックス内視鏡の開発である。当グループでは癌や生活習慣病をはじめとする様々な疾患に起因する生体レドックスをイメージングするための超小型ESRコイルを内視鏡あるいは鉗子先端に取り付け、内視鏡外科手術に診断機能を導入することに成功している。これまでの癌摘出手術においては、患者から採取した病変組織の病理診断の結果を待って切除範囲を決定していたが、レドックスナビゲーション内視鏡の開発によって、このような待ち時間は一切不要となる。つまり内視鏡とESRによるレドックスイメージングによって癌病巣の広がりと悪性度を可視化し、その情報によって切除範囲をナビゲーションする。また将来のレドックスナビゲーション手術の実現に向けて、操作性に優れた小型手術支援システムの試作も完了している。このシステムは(1)体腔の映像を提供する内視鏡、(2)関節自由度の高い鉗子、(3)上記を保持するボールジョイント部および駆動部、そして(4)操作部から構成される。術者は患者から離れたコンソールに座り、画面を見ながらマニピュレータを操作すると、手首の動きがコンピュータ制御により患者の腹腔内に挿入したロボットのアームに忠実に再現される。これによりこれまでにない精密手術が可能となる。試作機の鉗子は上下、左右、さらに前後に可動であり、各動作におけるヒステリシス特性を実測したところ、100gの加重を付加した条件下において、右腕、左腕とも設計通り良好なヒステリシス特性を示した。

将来的にはこの先端にMRIコイルも取り付けることによって臓器や血管の三次元画像も正確に重ね合わせることを目標とする。この統合された手術支援システムでは診断と治療がリアルタイムに融合し、低侵襲治療としての内視鏡外科手術に新しい可能性をもたらすであろう。

これらの革新技術を手術支援システムに搭載することにより、これまでにない超低侵襲治療が可能となる。現在稼働している手術支援ロボットはすでに全世界で1400台を超え、米国がこの内の1000台以上を占めている。一方で、我が国のそれはわずかに7台(全て米国製)に留まっている。生体レドックス内視鏡グループは、手術支援システムの中核部品であり、なおかつ我が国が圧倒的なシェアを占める内視鏡に革新的な付加価値を付けることによって、画期的な診断・治療融合機器へと発展させる。これによって従来の手術支援ロボットの枠組みを変えた新しい市場を創成する。研究の遂行にあたっては、他の研究グループとの横断的な融合研究を積極的に進めており、生体レドックス画像解析グループとはレドックス内視鏡の開発、生体レドックスイメージンググループとはレドックスナビ対応内視鏡保持装置の開発、またメタボリックプロファイリンググループとは高機能カメラによる癌の機能診断システムの開発をそれぞれ共同で推進している。