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レドックス疾患創薬グループ研究内容

糖尿病患者数は世界的に増加の一途をたどっており、それに伴う合併症の増加は国民の健康および医療経済の両面において重要な問題となっている。次々と新規の血糖降下薬やインスリン製剤の開発が行われ臨床応用が可能となっているにも関わらず、糖尿病合併症の発症や重症化は未だ減少しておらず、その成因に基づく特異的治療薬の開発が求められている。しかしながら、糖尿病性合併症の成因についてはいくつかの仮説が提唱されているもののすべてが解明されているわけではなく、臨床応用可能な特異的治療薬は全く無いのが現状である。レドックス疾患創薬グループは、糖尿病合併症の成因における酸化ストレス亢進の重要性とその発生機序を明らかにし、この機序をターゲットとした新規合併症治療薬の創薬を目指している。

図:糖尿病臓器における酸化ストレス亢進機序とその機序をターゲットとした治療戦略
今後は、本グループがこれまで明らかにしてきた糖尿病における酸化ストレス亢進機序、すなわち、糖尿病における血管壁プロテインキナーゼC(PKC)―NAD(P)Hオキシダーゼ系活性化1-3)、さらには本拠点で明らかにした組織アンジオテンシンII産生に重要な役割を果たすキマーゼのPKC-NAD(P)H系オキシダーゼ活性化への関与4)、そしてこれらの機序をターゲットしたビリルビン、ビリベルジンおよびその類縁体の有用性を示すヒトでのエビデンス5)や動物実験での成績6)などを新しい創薬シーズの基盤として研究をさらに推進する。また、創薬研究の推進と並行して、臨床疫学や分子生物学を用いた基礎的研究に加え、拠点における生体レドックスの新規画像化解析法(オーバーハウザーMRI法;OMRI法)、メタボリックプロファイリングによる代謝解析などの生体レドックスをナビゲーションする新手法を駆使することにより、糖尿病合併症の全く新しい非侵襲的画像化解析による病態解析、早期診断・薬効評価法の開発も同時に推進する予定である。具体的には、OMRI法を用いた腎におけるレドックス解析および腎組織の酸素分圧の測定が全く新しい糖尿病性腎症の早期診断法・薬効評価法として有用であることを創薬研究の推進と同時に明らかにする。また、糖尿病における認知症特にアルツハイマー型認知症の増加が本邦も含め世界的に問題となっているが、本グループは糖尿病性認知症の発症進展における脳内酸化ストレス亢進の重要性とその機序の研究も既に開始しており、その創薬研究の推進と同時に、酸化ストレス亢進に起因する糖尿病性認知症の早期診断・薬効評価法としてのOMRI法による脳内レドックス解析の有用性も明らかにする予定である。

参考文献:
1) Inoguchi T, et al. Proc Natl Acad SciUSA 89, 1992 (被文献引用数489).
2) Inoguchi T, et al. Diabetes 49, 2000 (被文献引用数458).
3) Inoguchi T, at al. J Am Soc Nephrol 99, 2003 (被文献引用数 99).
4) Maeda Y, et al. Am J Physiol, in press, 2010.
5) Inoguchi T, et al.JAMA 298, 2007.
6) Fujii M, et al. Kidney Int, in press, 2010